フロイト流に考える夢解釈と夢判断

夢診断

夢の解釈とはいったい何でしょうか。ひとがみた夢を解釈することにどんな意味があるのでしょうか。解釈するという当たり前にも思えることを過去の偉人たちはどのように理解しているのでしょうか。また私たちは夢を解釈することで、何を得ることができるのでしょうか。

目次

フロイトによると

フロイトは従来理解が困難であった夢の言葉を理解する方法を示すことに成功しました。それによって彼は無意識に至る王道を手に入れました。また、彼は夢を理解できないような心理学は正常な精神活動ですら理解することができないであろうとも述べています。夢解釈は夢以外の多くのものに対する解釈の基盤となりうるからです。つまり、正しい正常な精神活動や異常な精神活動、症状などを理解する大きな基盤ともなりうるのです。そして、夢を解釈することの重要な効用としては、何よりも有効な心理療法としての手段の一つであるということがあげられます。

夢解釈の技法

夢解釈の技法とは、象徴を解釈していくというとても素朴な方法から出発してきました。そして、夢の中の潜在的な内容のなかにみいだされる原始的なレベルの思考過程を再構成して理解するという複雑な体系的な方法論として発展してきました。この夢の中の力動を理解していくことによって、私たちはその夢見手のもっている疾患の力動についても理解を深めることができると考えています。夢のイメージはそれ自体が、その夢見手の思考過程を反映していることが多いからです。

精神分析の中での夢

よくいわれているように精神分析による治療では、毎日の面接を基にして治療が行われます。現在こういったかたちでの治療が行われているところは非常に少ないと思いますが、通常はそのようなかたちで実施するといわれています。そして毎日の面接を行ったとしても、問題の解決までには通常1年から3年の歳月が費やされることになります。場合によっては5年以上の期間を費やすこともありえます。こういった伝統的な精神分析に対してはいろいろな批判がでており、実際に実行にこういった治療を受けることができる人はごく少数なのではないでしょうか。

精神分析とは

そもそも精神分析とは何であるのか。これを理解することが夢解釈を理解することの近道になると思われます。フロイトによると、転移と抵抗の存在を認め、それらを基にして進められる研究方法であれば、それが私の方法から得られた結論と異なった結論に達したとしてもそれはすべて精神分析とみなしてよい、と述べています。したがって精神分析の標準技法は、目的を達成するためのさまざまな方法の中での一種でしかないのです。そのため、多くの技法等によって形成される精神分析のように、夢解釈の方法も多数あり、またその解釈も多義的なものになっているといえるでしょう。夢解釈を行うまえに、夢の顕在的内容から潜在的内容へ、夢の状況の再編成を行うことがあります。これは夢見手の抱えている問題の布置の再構成といった意味で行われます。こういった作業を終えたのちに、夢の中の個々の象徴の意味を解釈していくことになる場合が多いです。これもまた精神分析の手法の一つであるといえるでしょう。

フロイトの「夢判断」を脳科学の分野から分析すると

フロイトの夢判断を現代の脳科学から分析するとどういったことがわかるのでしょうか。フロイトの夢判断は正しいののでしょうか。それとも正しくないのでしょうか。脳科学の知見を基に、フロイトの夢に対する考えについて再考します。

フロイトのいう原始的な欲求過程とは

フロイトが夢について正しく理解できていた点は、脳科学の分野から考察すると、夢の中の原始的な情動面を重視した点にあると考えられています。実際、夢は原始的な欲求過程が睡眠中に放たれていくことで進行していきます。そしてその欲求の過程はセックス、攻撃、逃避といった本能的な生存手段を含みます。高揚や歓喜、幸福、愛といった望ましいものに近づいていく感情も含まれます。同様に、恐怖や不安やパニックを避けようとします。フロイトはこれを欲求の一次過程とよび、目覚めているときの意識に特徴的なより現実に考慮されたかたちの二次過程と区別しました。

フロイトによると夢の原動力は本能的な情動である

しかしながらフロイトは性的なことの関連を強調しすぎているという批判を受けています。また、怒りや恐怖といった負の感情に対してあまり多く語っていません。理由としては、フロイトが目を向けたのはもっぱら願望充足としての欲求であったことにあるでしょう。フロイトの夢理論では夢の内容構成の裏に隠れて夢を動かしている情動の突出性や強い連想性に多大な関心が向けられています。つまりフロイトは夢はある程度本能的な情動が原動力になっていると考えているのです。そのため、情動に関連した記憶が次々と緩やかに結びついていくことで夢が展開していくと考えました。この点においてもフロイトの考えはただしいといえるでしょう。

フロイトの考える感情の重要性

特に精神分析においては、哲学や心理学に比べて、感情の重要性に重きを置いています。夢は私たちに、自分たちには強力な直観力や情動力が備わっているということをはっきりと思い起こさせてくれる力をもっています。それだけではなく、わたしたちには、狂気に向かっていく傾向をもっているのですが、目覚めているときには厳密なチェックを受けて抑え込まれていることも夢をみることで理解することができます。フロイトによると、こういった夢の中でのルールは覚醒のときの意識に対しても当てはめて考えることができるといわれています。すなわち、覚醒時の意識の私たちが考えているよりはるかにたくさんの部分は直感や情動脳から入ってくると主張されました。この点についても、脳科学の分野では否定することはできません。

無意識の願望は恥ずべきもの

フロイトの夢理論によると夢の中の無意識の願望は、常に意識をわずらわそうとする恥ずかしいものということになっています。ちょうど彼が生きたヴィクトリア時代の性行為が社会の目を盗んでこっそり行う恥ずべきものとされていましたので、これと同様に考えられたのでしょう。フロイトは夢の奇怪さを説明するたえに、変形や検閲といった解釈を用いました。夢の願望充足のための欲求はそのままの形で夢に現れることは許されずいろいろ加工されるために奇妙な夢が生まれるとされたのです。しかし、もしも夢が情動や直感を隠すものではなくあらわにするものなのであれば、変形や検閲は不必要と考えることができます。そのためこの点においてフロイトは間違っているのではないかという批判がでています。