転移が夢に現れた場合はどのように夢を解釈するのか

心理療法を受けている最中にみる夢の中には転移がそのまま夢の中に現れてくることがあります。これを転移夢と呼んでいます。転移とは、心理現象であり、精神分析の技法の中で利用されるものです。この転移夢についてみていきたいと思います。

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転移とは

たいていの人は自分の人生の中で重要な役割を演じた幼いころの人物、(一般的には両親や近親者であることが多いものです)がもっていた属性を無意識のうちに周囲の人びとに付与する傾向をもっています。患者さんの中には教師や上司に対して自分の両親に対してであるかのように、あるいはまた彼らの子どもであるかのように振舞うことがあります。転移は患者さんの生活の中に侵入していきます。そのため、患者さんの対人関係がとても偏ったものになってしまうことがあります。この転移感情を多くもっている人は、分析治療の際にも転移の感情をもつことが多いです。そしてこの転移夢は人生に対する患者さんの秘められた態度の心像を描いていることが常ですので、転移夢を正しく解釈することが、患者さんの無意識に近づく近道になります。

シュテーケルの考える転移とは

シュテーケルという人は患者さんの葛藤が幼児期のものであるか、あるいは現在の困難な問題に関係しているかどうかにかかわらず、転移という状況の中で患者さんは自分の人生の中でのもっとも重大な葛藤を解決しようとしていると述べています。それだけ、この転移夢は治療の中で重要な意味を秘めていると言い換えることができるでしょう。フロイトが現れる前までは転移の問題はまったく重視されていなかったのが事実です。しかし、現在では転移感情が神経症の患者さんの治療のためには欠くことのできないほど重要なものであることが明らかとなっています。

抵抗

抵抗は、転移と同じようにどの分析的な治療の過程で生じる心理現象の一つです。患者さんが一時的であったり長期的であったりしますが、分析家に対して協力的に対応しなくなってしまいます。自分の生活史を明らかにすることを妨げたりすることもあります。神経症の患者さんは心の中に反社会的な衝動を抑圧していることが多いです。そしてこの抑圧が取り除かれることに対してさまざまな防衛機制をはたらかせています。不安はこの防衛機制の一つになります。そのため、分析家から自らをまもろうとするために抵抗を示すことがあるのです。心理療法家はこの抑圧された衝動の存在を取り除いていかなくてはならないのですが、それに抗う心の働きがこの抵抗になります。そしてこの抵抗の強さは無意識内のコンプレックスの力の強さに比例しています。この抵抗が夢の中に現れることももちろんあります。その場合には、この抵抗について心理分析の過程の中で取り上げていくことが必要となります。患者さんの抵抗を明らかにする夢もあれば、分析の開始に対する重要な問題を示唆するような抵抗夢も存在します。治療の初期においては夢は治療の状況や治療による予後などを見通すための情報をもたらしてくれることがあります。そういった意味でも患者さんのみる夢は心理療法にとっては非常に重要なものとなります。夢は多くの場合、患者さんの無意識の扉を開くカギとなるのです。