夢の機能としてとても面白い話があります。夢の中で問題に対する解答を得ることができるということです。非常に稀なことではありますが、夢のもってる一つの機能的側面であるといえます。
目次
ケクレの夢
何人かの有名な科学者たちは夢から問題の解答を得たことがあるといわれています。ベンゼン環の図式表示の考案者であるケクレの夢はその中でも有名なものですので、みてみたいと思います。ケクレは原始の特殊な配列について図式化しようと長年試みていましたが、それはなかなか実を結ばずにいました。ある日、彼は自分のしっぽに食いついている蛇の夢をみたのです。そして彼は目を覚ましてからその図式を紙に描きました。これによってベンゼン環の図式表示が可能になったのです。
夢の中で解答を得る
劇作家が夢の中で重要で劇的な解答を見出すことも時にはあるといわれています。また、作曲家が彼らの意識的な作曲活動のなかでは形を与えられなかったフーガの心像を視覚化するときもあります。代数学の数学者が解答を夢の中で得たという話もあります。ある数学者は来る日も来る日も解答を得るために努力を続けていました。しかし答えはでなかったようです。しかし、彼は何度もこの問題に取り組んでいる夢をみました。何年か経過したとき、彼はこの数学の問題をすっかり忘れてしまったといいます。すると、7年後に彼はこの問題に取り組んでいる夢をもう一度みたのです。すると、彼はずっと待ち望んでいたその答えを夢の中でみることができたのです。
自我の統合を保護する
ほかにも夢の機能として重要なものの一つに自我の統合を保護するというものがあります。眠りに入る際には精神の状態は意識のある状態から前意識の状態に入ってそこから無意識に入っていくことがしられています。この入眠するまでの間に人間は外界との関係を崩壊させ、結果、自我も崩壊します。眠くなってくると、自分自身の自己との接触を保つことや外界に適切に対処することがだんだんと困難になってきます。ものごとを考えることが煩わしくなり、行動もすることが億劫になってしまいます。この時点で思考が行動にとって代わっているように感じられるでしょう。睡眠は人間から自分が「自分自身」であるという感覚や自分がほかの誰とも違う存在であるという感覚を奪うことになります。クロンフェルトは睡眠中に、自我はイドの段階にまで低下すると述べています。
自我意識の回復
覚醒過程は入眠過程と逆の道筋をたどることになります。自我は失語症の回復と似た道筋を通って回復されていくのです。自我意識が修復されると、自我は外界や自我そのものと調和することが可能になります。現実に順応できるように夢によって準備を整えられた自我は外界との正常な関係を確立するために、覚醒の途上で再編成されることになります。すなわち夢は対象と主体への変化を防ぐことによって自我を保護していることになります。つまり、このように夢は心的過程の連続性や凝集性、統一性を保っていると考えられています。夢がもっている機能の一つが自我を保護するというものであることの理由はこういったところにあるといえるでしょう。夢がもっている役割は人が想像している以上の働きであると考えられます。